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発明の名称 車両の対人保護エアクッション装置
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2000-108824(P2000-108824A)
公開日 平成12年4月18日(2000.4.18)
出願番号 特願平10-299124
出願日 平成10年10月5日(1998.10.5)
代理人 【識別番号】100081824
【弁理士】
【氏名又は名称】戸島 省四郎
発明者 岡村 恭資
要約

特許請求の範囲
【請求項1】 車体前部にエアクッションを収縮した状態で取り付け、前記エアクッションに高圧ガス供給源からの高圧ガス供給ラインを開閉弁を介して接続し、前記開閉弁の操作部を運転席に設け、開閉弁を開く操作によって車体前部でエアクッションが急速膨張し、車体前面を遮蔽することを特徴とする車両の対人保護エアクッション装置。

【請求項2】 膨張したエアクッションの形状を水平部と水平部の後方で上方に起ち上がる壁部とからなる略L字形の立体形状とした請求項1記載の車両の対人保護エアクッション装置。

【請求項3】 膨張したエアクッションの水平部の前部と壁部の上部に水平面から所定の角度をもって直線的に傾斜させた傾斜面を設け、エアクッションの水平部の前部の傾斜面前端とエアクッション底部の前端とが交わるようにした請求項2記載の車両の対人保護エアクッション装置。

【請求項4】 膨張したエアクッション水平部の前部の傾斜面上端の高さをエアクッション水平部より高くした請求項3記載の車両の対人保護エアクッション装置。

【請求項5】 膨張したエアクッションの水平部の両脇に人の転げ落ちを防ぐネットを設けた請求項2~4いずれか記載の車両の対人保護エアクッション装置。

【請求項6】 エアクッション内部を複数の独立室に分割し、高圧ガス供給ラインを複数に分岐して、それぞれの独立室と接続した請求項1~5いずれか記載の車両の対人保護エアクッション装置。

【請求項7】 車体前部のバンパー内に収縮したエアクッションを収容し、エアクッションの膨張により内部からバンパーを押圧してバンパーを開き、エアクッションが飛び出るようにした請求項1~6いずれか記載の車両の対人保護エアクッション装置。

【請求項8】 膨張したエアクッション内に車体の前後方向に沿って複数の通風路を設けた請求項1~7いずれか記載の車両の対人保護エアクッション装置。

【請求項9】 車両のフロントガラスより上方に位置する膨張したエアクッション上部に透明の素材を用いた請求項1~8いずれか記載の車両の対人保護エアクッション装置。

【請求項10】 膨張したエアクッション前部に人を挟み込む櫛歯状の深い切れ込みを設けた請求項1~9いずれか記載の車両の対人保護エアクッション装置。


発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は車両と歩行者の衝突事故の際、歩行者を負傷から保護するための車両の対人保護を目的とした安全装置に関するものであり、特に車体前部に収縮した状態で収容したエアクッションを高圧ガスによって膨らませる車両の対人保護エアクッション装置に関するものである。

【0002】
【従来の技術】
従来の車両には、車両衝突事故の際に衝突の衝撃を和らげるためのバンパーを車体の前後に取り付けてあるが、対人衝突事故の際、歩行者を衝突の衝撃から保護するものはなく、歩行者は車両に跳ね飛ばされたり、ボンネットに乗り上げフロントガラスで強打したり、または地面に転倒し車体に巻き込まれたりして大きく負傷し、死亡することもある。

【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は従来のこれらの問題点を解消し、車両が歩行者と衝突する直前にエアクッションを車体前部で大きく膨らませ、歩行者をエアクッション内に捕捉して衝突の衝撃を緩和し、大きな事故に至らないようにする車両の対人保護エアクッション装置を提供することにある。

【0004】
【課題を解決するための手段】
かかる課題を解決した本発明の構成は、
1)車体前部にエアクッションを収縮した状態で取り付け、前記エアクッションに高圧ガス供給源からの高圧ガス供給ラインを開閉弁を介して接続し、前記開閉弁の操作部を運転席に設け、開閉弁を開く操作によって車体前部でエアクッションが急速膨張し、車体前面を遮蔽することを特徴とする車両の対人保護エアクッション装置
2)膨張したエアクッションの形状を水平部と水平部の後方で上方に起ち上がる壁部とからなる略L字形の立体形状とした前記1)記載の車両の対人保護エアクッション装置
3)膨張したエアクッションの水平部の前部と壁部の上部に水平面から所定の角度をもって直線的に傾斜させた傾斜面を設け、エアクッションの水平部の前部の傾斜面前端とエアクッション底部の前端とが交わるようにした前記2)記載の車両の対人保護エアクッション装置
4)膨張したエアクッション水平部の前部の傾斜面上端の高さをエアクッション水平部より高くした前記3)記載の車両の対人保護エアクッション装置
5)膨張したエアクッションの水平部の両脇に人の転げ落ちを防ぐネットを設けた前記2)~4)いずれか記載の車両の対人保護エアクッション装置
6)エアクッション内部を複数の独立室に分割し、高圧ガス供給ラインを複数に分岐して、それぞれの独立室と接続した前記1)~5)いずれか記載の車両の対人保護エアクッション装置
7)車体前部のバンパー内に収縮したエアクッションを収容し、エアクッションの膨張により内部からバンパーを押圧してバンパーを開き、エアクッションが飛び出るようにした前記1)~6)いずれか記載の車両の対人保護エアクッション装置
8)膨張したエアクッション内に車体の前後方向に沿って複数の通風路を設けた前記1)~7)いずれか記載の車両の対人保護エアクッション装置
9) 車両のフロントガラスより上方に位置する膨張したエアクッション上部に透明の素材を用いた前記1)~8)いずれか記載の車両の対人保護エアクッション装置
10) 膨張したエアクッション前部に人を挟み込む櫛歯状の深い切れ込みを設けた前記1)~9)いずれか記載の車両の対人保護エアクッション装置にある。

【0005】
【作用】
本発明では、運転中、車両前方に歩行者を発見し衝突を回避できないと判断したらブレーキを踏むとともに、運転席のスイッチを操作して高圧ガス供給源の開閉弁を開きエアクッションを膨らます。バンパー内に収縮した状態で収容したエアクッションに高圧ガスが流入すると、エアクッションはバンパー内で膨み始め、バンパーを内側から押圧しバンパー上端を車体から外し、バンパー下端のピン連結部を中心にバンパーが開いて車体前部でエアクッションは所定形状に急速に膨らむ。歩行者はエアクッションにより車両との衝突の衝撃を緩和され、負傷を最小限にとどめることができる。エアクッションの形状を水平部と壁部とからなる立体形状にしたものは、水平部で歩行者を受けとめ、壁部で車体との衝突の衝撃を緩和する。エアクッションの水平部の前部と壁部の上部を傾斜面としたものは風圧によってエアクッションを下方に押し込んで、上方にめくれ上がるのを防ぎ、エアクッションを所定位置で安定させ、前部の傾斜面で歩行者をすくい上げエアクッション内に倒れ込ませる。さらに水平部の高さを前部の傾斜面の最上端より低い位置にしたものはエアクッション内に歩行者を捕捉して、反動でエアクッション前方に飛び出すのを防ぎ、また水平部の両脇にネットを設けたものは歩行者がエアクッションの横方向から転げ落ちないようにする。エアクッションの内部を複数の独立室に分割したものは、各空間に高圧ガスが同時に流入するのでエアクッションの形状形成が容易で、またエアクッションの一部が損傷しても被害を最小限にできる。エアクッション内に風圧による空気流を逃がす通風路を複数設けたものはエアクッションの形態を安定させ、安定した状態で歩行者を確保する。車両のフロントガラスより上方部分のエアクッションに透明な素材を用いたものは運転席から前方の視界を確保して、エアクッション装置作動後、車両を安全に移動できる。エアクッション前部に櫛歯状の深い切れ込みを入れたものは歩行者を切れ込み内に挟み込んで確保する。

【0006】
【発明の実施の形態】
エアクッションの材質は気密膜を付着させたケブラー布等の耐力があるものが望ましい。高圧ガス供給源としては高圧の空気ボンベや既存のエアバック装置のガス供給源として用いられているインフレーター等が瞬間的に大量のガスを送り込めるので望ましい。高圧ガスの供給ラインに設けた開閉弁としては人力操作、空気圧操作、機械操作、電磁操作するものがある。

【0007】
【実施例】
以下本発明の実施例を図面に基づいて説明する。図1は本実施例の車両の対人保護エアクッション装置のエアクッション膨張後の斜視図、図2は図1でのA-A断面図、図3は図1でのB-B断面図、図4は歩行者を膨張したエアクッション内に確保した状態を示す側面図、図5は高圧ガスの供給ラインを示す説明図、図6は車体前部のバンパーの正面図、図7は収縮したエアクッションを収容したバンパーの横断面図、図8は中央部に凹みを有する膨張したエアクッションの正面図、図9は図8でのC-C断面図、図10は図8でのD-D断面図、図11はエアクッションのその他の形状例、図12は図11(c)のエアクッションの横断面図、図13は図11(d)のエアクッションに歩行者を捕捉した状態を示す斜視図である。本実施例(図1~13参照)図中1はエアクッション、1aはエアクッション1内の分割壁、2は膨張したエアクッション1の水平部、3は膨張したエアクッション1の壁部、4は水平部2前部の傾斜面で、その上端は水平部2より高い位置にある。5は壁部3上部の傾斜面、6は水平部の両脇に設けたネット、7は壁部3に横並びに3ケ所設けた長方形断面を有する通風路、8は車体19前部のバンパー、8aはバンパー8下端と車体19を係止するピン、8bはバンパー8上部の先端部に設けた係止孔、8cは車体19に設けたバンパー挟持部、8dは係止孔8bと係合するバンパー挟持部8cの上端の係止片、9は電磁弁、10はエアクッション1を膨張させる空気ボンベ、11は空気ボンベ10からエアクッション1までの空気の供給ラインで途中から4つに枝分かれしてエアクッション1の4つの独立室とそれぞれ接続している。12は電磁弁9の制御回路、13は運転席に設けた電磁弁の開閉スイッチ、14は膨張したエアクッション1の凹部、15は膨張したエアクッション1の側壁、16は逆止弁、17は切れ込み部、18は歩行者、19は車体である。本実施例の車両の対人保護エアクッション装置では、エアクッション1を収縮した状態でバンパー8内に収容しており、運転中、車両の前方に歩行者18を発見し衝突を回避できないと判断したらブレーキを踏むとともに、運転席のスイッチ13を操作して空気ボンベ10の供給ラインに設けた電磁弁9を開き、エアクッション1内に空気を流入させる。バンパー8内に収縮した状態で収容したエアクッション1に空気が流入するとエアクッション1はバンパー8内で膨らみ始め、バンパー8を内側から押圧してバンパー8上端を車体19から外し、バンパー8下端のピン連結部8aを中心にバンパー8が開き車体前部で所定形状に急速に膨張する。エアクッション1は内部を縦方向に4つに分割し、分割したそれぞれの独立室に空気ボンベ10の供給ライン11を分岐して接続しているので形状形成し易くなっている。エアクッション1が膨張後は傾斜面4及び5に風圧が当たり、膨張したエアクッション1を下方に押し込み、また通風路7から風圧による空気流を逃がすことでエアクッション1の位置を安定させる。高圧ガスの供給源としては空気ボンベ10の他に既存のエアバック装置に用いられているインフレーターを使うことができる。その際にはエアクッション1の容積に応じたインフレーターを分割したエアクッション1の独立室それぞれに取付けてエアクッション1が膨張する時間を短かくする。またインフレーターの着火スイッチは運転席に設けておく。衝突時、歩行者18は傾斜面4によって足元からすくい上げられ、膨張したエアクッション1内に倒れ込み捕捉される。このとき膨張したエアクッション1の水平部2が傾斜面4の上端より低い位置にあるので衝突の反動で歩行者18が前方に飛び出すのを防ぎ、また水平部2の両脇のネット6により、歩行者18が膨張したエアクッション1の横方向に転げ落ちるのを防いで確実に膨張したエアクッション1内に捕捉する。歩行者18は膨張したエアクッション1によって車体19と直接衝突するのを免れ、大きな負傷を避けることができる。膨張したエアクッション1の上部は透明の材質を用いているのでエアクッション1が膨張後も運転席からの前方の視界を確保でき、車両を安全な場所へ移動できるようにしている。膨張したエアクッション1の形状を図8~10に示すような中央部を凹ませた形状にしたものは凹部14で歩行者18を捕捉して膨張したエアクッション1との衝突の反動で前方に飛び出ないようにし、両側壁15によって横方向に転げ落ちないようにしている。またエアクッション1内部を縦方向に4つに分割し、分割したそれぞれの独立室に空気ボンベ10の供給ライン11を分枝して接続しているので形状形成し易くなっている。エアクッション1の形状は図11に示すように、(a)は内部を複数に分割した直方体、(b)はL字形の立方形状で内部を縦方向に4分割したもの、(c)は(b)内部をさらに横方向に5分割したもの、(d)は櫛歯状の深い切れ込みを設けた立体形状のものなどいろいろな形状がある。(c)は図12に示すように分割した各部屋の接続部に逆止弁16を設けているので流入した空気が逆流せずエアクッション1の形状保持がし易くなっている。(d)は図13に示すように切れ込み部17に歩行者18を挟み込むようにしてエアクッション1内に捕捉する。本実施例の車両の対人保護エアクッション装置は対人保護の目的だけではなく、車両が道路脇の壁や電柱又は他の車と衝突しそうなときに作動させることで衝突による衝撃を緩和して車両の損傷を低減し、また運転者や搭乗者への衝撃を和らげることができる。

【0008】
【発明の効果】
本発明によれば車体前部でエアクッションを膨らませて、歩行者と車体の衝突の衝撃を緩和し、歩行者を大きな負傷から保護することができる。また膨張したエアクッションの水平部を一段低くして歩行者がエアクッションとの衝突の反動で前方に飛ばされるのを防ぎ、また水平部の両脇にネットを設けて歩行者が横方向に転げ落ちるのを防ぎ歩行者を確実にエアクッション内に捕捉するようにした。さらに膨張したエアクッションに傾斜面を設けたもの、通風路を設けたものはエアクッションの位置を安定させ、安定した状態で歩行者を確実にエアクッション内に捕捉することができる。また対人衝突時のみだけでなく対物衝突時にもエアクッションを車体前部で膨張させて衝突を緩和し、車両の損傷を低減でき、また運転者や搭乗者への衝撃を和らげることができる。



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